目に見えるものと、見えないもの
色は「目に見えるもの」だと、私たちは無意識のうちに思っています。赤い花、青い空、緑の木々など、確かに色は目で見るものです。けれど、長年、色を通して人と向き合ってきた今、私は「色は、目に見えないものまで映し出してくれる」と感じています。
その人の心の状態や価値観、感性、そして本人さえ気づいていない可能性。色は、見えないものに気づく入口なのかもしれません。そんなことを改めて実感したのが、先日訪れた高野山でした。

見る力が変わると、世界が変わる
高野山大学の松長潤慶学長をはじめ、「子どもたちの今と未来をより良くしたい」という志を持つ仲間たちと、自然の中を歩き、お弁当を食べ、星空を眺める時間を過ごしました。高野山の山の上では、子どもも大人も一緒になって色探しをしました。葉っぱや花、蛇の抜け殻、木の幹や鳥居まで、普段なら見過ごしてしまうものを観察しながら色分析をしていきます。
すると、不思議なことが起こります。ぼんやり見ていた景色が驚くほど鮮明に見えてきて、発見が次々に起こります。見るものは変わっていないのに、見える世界が変わるのです。この体験こそが色彩教育の本質だと思います。色探しは、ただ色を見つける遊びではありません。「まだ見えていないものに気づく力」を育てる機会なのです。
その後、お寺で「今の自分を表す色」や「好きな色」を通して自己紹介をしました。一人ひとり選ぶ色も、色を選んだ理由も違います。そんな中、松長学長はこうおっしゃいました。
「私は、選べませんでした。どの色も素晴らしいからです。」
その言葉を聞いた瞬間、「色に正解はない」という私たちが大切にしてきた考え方と、密教の教えが一本につながったように感じました。密教には、極彩色(ごくさいしき)という言葉があり、宇宙のあらゆる現象や自然の姿をそのまま真理の現れと捉え、全ての色彩もそのまま肯定するという象徴なのだそうです。

見えていない価値に気づく
その後の対話で、松長学長はこんな言葉をくださいました。
「すべての存在には価値がある。価値がないのではなく、その価値を見る目が育っていないだけ。」
私たちは、知らず知らずのうちに自分や人へラベルを貼ってしまいます。
「この子は落ち着きがない。」
「この人とは分かり合えない。」
「私はこれが苦手だから。」
ラベルを貼ると理解したような気になりますが、それは、固定概念であって、その人や自分自身の可能性を見失ってしまうことがあるかもしれません。
対話の時間には、子育て中のお母さんが「こうやって弱音を吐ける場所が今までなかった」と話してくださいました。評価されず、自分の気持ちを受け止めてもらえるだけで、人は少しずつ自分を取り戻していく。その時間もまた、「見えない価値」を大切にする学びだったように思います。
色と対話が育てる未来
私たちが目指すのは、自分の価値を知って認め、人の価値も感じられる人が溢れる世界です。
色に優劣がないように、人にも優劣はなく、一人ひとり違うからこそこの世界は美しい。
大切なのは、見えているものだけで判断せず、まだ見えていない価値を信じること。
その視点が子どもたちの未来を育み、自分の軸に迷いながら生きる大人の心も照らしてくれるだと、高野山の自然と対話から改めて感じることができました。

AIが瞬時に答えを出してくれる時代になり、知識は誰でも手に入るようになりました。
だからこそ、これから必要なのは、
「私はどう感じているのか」
「目の前の人は何を感じているのか」
「本当に大切なものは何か」
そんな、答えのない問いを考え続ける感性と知性なのだと、教えていただきました。
松長学長からも多くのお力添えをいただき、kashikoメソッドの「7つの成長グラデーション」にこの考え方を取り入れています。
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